松陰神社の境内に松下村塾と並んで建っているので、一まとめに訪問できる。家自体はかなり広いが、松陰が閉じ込められていたのは３畳半の部屋だという。この場所から維新の偉人たちが輩出したのかと思うと感慨無量だ。

松陰は「尊皇攘夷」の教祖とし、徳川幕府を倒して新政府を作り、開国して西洋の技術を導入しつつ防衛力を強化すべきだと考えていました。兵学者であった松陰は、欧米列強に対抗できる国家をいかにして築くかを探求し、その目的のために命を賭して密航を企てました。1854（嘉永7）年、日米和親条約（神奈川条約）を締結したペリーは下田に回航し、条約をどのように実施していくか具体的な事項の交渉を行っていました。そのような中で、この密航事件が発生。小舟で米国艦船に近づき、米国への密航を懇願しましたが、幕府からの許可を受けるまでは出来ないと拒絶されてしまいます。 松陰が投獄されたことを知ったペリーは、“日本の法律によれば大きな罪であっても、我々から見れば、ただ自由にして大いに讃えるべき好奇心の発露にすぎないように思える。極刑は与えず、寛大な対応を望む。”と幕府に伝えたという話は感動的です。 下田獄の後、江戸（伝馬町牢屋敷）、萩（野山獄）、自宅謹慎、江戸と牢獄を転々とし、1859（安政6）年に処刑されてしまいます。自宅謹慎中の読書と著述への専念が「松下村塾」の主宰に繋がり、そこで学んだ若者が明治維新後に活躍、日本を近代化へと導きました。松陰の思想的な影響が大きかったことが伺えます。わずか29年の短い人生でしたが、その大局観や先見性は、どこかの政治家にも見習って欲しいものです。先進国の座から滑り落ちそうな現在の日本を、松陰は嘆き悲しんでいるに違いありません。