まず最初に最も悪いのは私たちです。
それは船酔いに対する認識の甘さ、このツアーについてもっと真剣に検討するべきでした。
私達はホテルに到着すると同時に今回の旅の予定をツアーデスクを訪問し決定していきました。様々な提案を受け、旅の3日目にこのツアーを予定しました。説明では午前6時40分にエントランス集合、午後2時には終了するとの説明でした。
当日は午前6時30分にはエントランスに行きましたがピックアップされたのは午前7時。それならゆっくり朝食がとれたはずでした。
バンにはすでに1組のカップルが乗車しており私たちと他1組参加があるとのこと。車中で20分ほど待ったが残り1組は一向に現れません。仕方なくドライバーは車を発進させました。
しばらく走ったところドライバーの携帯が鳴りUターン。別のホテルに向かいますが、結局 残り1組は現れませんでした。この時点ですでに1時間20分ほどが経過しています。ドライバーは猛スピードで目的地へ向かいました。
到着すると簡単な説明を受け 「君たちは朝食付きプランだから食べてくれ」言われましたが、そこには見るからに不味そうなパンとカチカチのフルーツ、どうすればこんなに不味くなるのか不思議な味のオレンジジュースがあります。車中同じだったカップルも吐き出していました。急いででも朝食をかきこんできて正解でした。
ボートにはそのカップルと私たち、そして5人グループの計9人の参加者、それに船長とガイドで出航です。
ガイドからジンベイに出会ってからの説明など受けつつボートは猛スピードで海を走ります。3人掛けの椅子には僕が中で両端に彼女と別の参加者が座りました。ボートはかなりスピードで波とぶつかります。僕は真ん中で手すりなど掴むものもが無くかなり不安定でした。40~50分走ったあたりではもう岸は見えなくなっていました。ガイドの説明では、この下にはもうジンベイはいる。定期的に浮上してくるのでそのタイミングを狙うと言ってました。なので案外簡単に見つかるのかなぁと思いつつ皆と同じように海面を探していました。すると急にスコールが。特に遮るものも無く濡れるしかない。相変わらずの猛スピードに雨、体温はみるみるうちに失われていきます。心配になり彼女を見ると何やら様子がおかしい。大丈夫だと言うので持参していたバスタオルを掛けました。程なくスコールを抜け引き続きジンベイを探します。すると突然、正面に座っていた他の参加女性が嘔吐しました。それに呼応するように彼女も嘔吐。背中をさすってあげるがかなり辛い様子。船尾に目をやると一緒だったカップルの女性も既に何度も嘔吐していた様子で完全にダウン。しかしジンベイが現れる様子は全く無くボートは走り続けます。この時点で恐らく時計は午前10時頃か。彼女も向かいの女性も何度も何度も嘔吐を繰り返す。次第に日差しも強くなっていき、かなり悪い状況に。ガイドからは水を渡されるだけ。彼らは心配する様子もなくひたすらジンベイを追ってボートを走らせるのみ。しかし全く現る気配も無く、ボートはどんどん進む。進んだ分だけ帰ってこなければいけないんだと思うだけでゾッとする。彼女はだんだん顔色が悪くなり唇は紫色に体も震え出す。目の焦点も定まらず熱中症かもしれない。
このポイントでは駄目なんで別を目指すと言われるが彼女を支えながらだとかなり体勢が苦しい、その時だった。波とぶつかりボートは大きくバウンド。僕は腰を強打してしまいました。立ち上がることもできず。彼女を支えることもできない。ボートの縁を必死に掴んで耐えるしかない状況です。
それからどれくらい進んだのか彼らが目指したポイントに到着。そこには既に30隻以上か他のボートがいました。あっちに出たぞー!いやこっちだぁ!!ボートは右往左往。ジンベイを追うその集団はある意味異様。どのボートにも船体から身を乗り出して嘔吐する参加者。地獄絵図。阿鼻叫喚。
このツアーを楽しみにされていた参加者がいることは当たり前に理解しています。船酔いに弱いなら最初から参加するなと言われるでしょう。しかし、熱中症や打撲や怪我はどうなのか。彼らは参加者の安全を一番に考えていると最初に言ったはず。他のボートにも体調不良の方がいるから、それらをまとめて引き返してもらうことはできないかと尋ねるも会社が違うから無理と一蹴。私達はもうただただ時間が過ぎるの耐えるしかなかった。
結局そこでもジンベイは見れずほかのスポットへ。その間も彼女は嘔吐を繰り返し座っていることもやっと。何度もお願いすると最後は私たちを無視する始末。あまりの態度に日本語で怒鳴りまくる。午後2時までは約束契約だから帰らないと言う。船長の時計でその時が正午だと解った。あと2時間。
しかしジンベイに出会えたのはそれから3時間後だった。
「お前たちもどうだい?潜らないか?」とガイド
お前アホなんか?おちょくってる?この姿みてどうやって潜れるねん。
帰りに船長が「あれ友達のボートだ」言って近寄って行くと向こうの参観者が体調不良なのかこちらへ移動してくる。やってるやん。。。
やっと岸が見えてきた。と思ったら別の場所。これもツアーに組み込まれている別のビーチでの食事とかプログラムらしい。船長が手も洗わない汚い手で切り刻んだ魚や野菜の不気味な食べ物。これが食事付きの食事だそうだ。
しかしガイドは必ず最初に私たちを帰還させると言ったはず。それを追求するも言った覚えはない。船長のがどーのこーの。言い訳ばかりで話にならない。
あとで聞いた話だが、このツアーは保証付きだったらしい。必ずジンベイに会わす、会えなければ返金などあるとのことで、だから彼らは必死だったのだ。9人中4人が体調不良なのに。ある意味、仕事熱心。恐らく彼らは船上で死者が出ても死体を転がしジンベイを血眼になって捜すのだろう。
ホテルに帰れた時は既に午後7時近く。ホテルを出るときに摂った食事から何も食べず水のみ、最初は寒さ、のちにずっと強烈な日差しに晒され肌はほぼ火傷。2時に終わると思い組んでいた予定もパァー。旅行中の貴重な1日だけではなく、その後も彼女の体調が戻ることはなく、この旅行自体が滅茶苦茶になってしまいました。