水炊きの楽しみはなんと言えどもスープだ。お店もまずはスープを最初にすすめるはずだ。塩や胡椒は自身で調整するお店も多いが、こちらはほんのりと塩味はあるようだ。あとはお好みで小口切りの浅葱、蒸しにんにくを加えて楽しむ。ねぎ類は好きなので適宜使わせていただいたが、蒸しにんにく...はかなり風味を変えるので、使うのであれば、最後にしたい。水たき御膳の雑炊は別途調理されて供されるので、水炊きのスープは飲み干しても構わないのが嬉しい。鶏肉はちょっと骨が多い。安価な設定な分、ここは致し方ないところか。ただほろほろと骨離れは良い。鶏肉特有の臭みはいっさいない。お好みでポン酢を使うが、これも必ず使うまではないかも知れない。あらかた水炊きをいただき終えて雑炊をお願いする。部屋に出入りする中居さんをうまく捕まえてお願いする必要がある。中央に卵。火が強めに入っていて卵黄が白っぽくなっているのはやや残念。鍋全体を締める白と橙色の対比が美しいので、できるならばそれを見たかった。それでも卵黄を崩してみれば、半獣の黄身が流れ出して、思い描くコントラストがそこに現れる。満足した。スープとスープの染みたご飯も美味しい。水炊きも雑炊でも存分にスープを楽しめた。添えられている鶏節の削り粉は香ばしく、風味は増すが好みがあると思うので、まず少しだけ試してみてからが良いか。 昼から2000円を超えるメニューは、ちょくちょくいただく訳にはいかない。ならばもっと安く気軽にスープを存分に楽しむには、奄美の郷土料理の鶏飯。鶏飯?けっこうアレンジが入っている。石焼きビビンバのような見た目。そして、いわゆる鶏飯とは具の構成もかなり違う。何より鶏肉が蒸しではなく焼き。これはこれで芳ばしくて良い。温玉。わさびと青ねぎ、海苔は鶏飯と言うよりひつまぶし。かける鶏スープは水炊き同様の白湯。奄美で白湯はなかったが、水炊きスープだって当然美味しいよね。コンセプトだけ鶏飯。スープは土瓶入りで一度だけお替わり可能。ご飯はお茶碗に三杯とれて、スープはひと瓶でたっぷりと二杯お茶漬けできるので、最後の一杯はそのまま。すべてお茶漬けではなくいただけば、スープとして二杯でもイケる。 親子御膳。卵白が透明でふるふるだが、しっかりと火が通っている抜群に好みの状態。逆に卵黄はもう少し半熟の状態か、後乗せの追い卵黄で月見にして欲しいか。割下は塩辛いこともなく甘過ぎもせずにあっさりめでこれもなかなか。鶏肉もやわらかい。添えられるお汁はお味噌汁だが、これが鶏スープであったら最高なのだけれど。 鶏五目釜めし御膳は、釜飯にランチの先付けの小鉢。松花堂、お味噌汁にお新香。一時話は逸れるが、松花堂って何?と思ったことがあった。名の由来は京都岩清水八幡宮の江戸時代の社僧 松花堂昭乗だそうだが成立したのは昭和の時代だとか。新しいね。要は十字に仕切られたお重にお惣菜とご飯を装った懐石風幕の内弁当みたいなものと思っておけば良いらしい。そんなわけでご飯は釜めしなのだ、惣菜が四種。鶏刺し、ロメインレタスとトマトのサラダ、出汁醤油のお豆腐、そして鶏レバーの煮凍り。鶏刺しとは言っても湯通しか蒸しで火は通っている。昨今は鶏刺しもうるさいのでこのクラスのお店では控えるところも多い。煮凍りがいい。レバーの風味、出汁の風味、お酒が欲しくなる。さて、釜めし。いただいた釜めしのご飯は、かなり固めで、少し芯が残った感じの炊き加減。出汁はよく染みているが、この固さは好き嫌いがありそう。少し間を置いて蒸らした方がいいのかな。具は鶏はもちろんのこと鯛の切り身などもあり、五目らしくいろいろ楽しめる。別途、お出汁が添えられるので、最後のお焦げは出汁茶漬けでさらさらっと。固めのご飯がスープでちょうど良くなる。お出汁は昆布や椎茸...かな。鶏一辺倒ではないのね。なかなか。ごちそうさまでした。晩春の頃から夏を超えてランチをいただいてきたが、2019年11月いっぱいくらいまで、工事のため本店の3階にての営業。さらに表示