宇都宮における定宿にしてきました。経営母体が変わった直後は問題を感じませんでしたが、今回2018年以来4年ぶりに利用してみて、看過しがたい変化があったので報告します。
客室、雨に濡れない駐車場、レストランの料理は相変わらず標準以上で、お薦めできます。今回、イタリアン「フォンターナ」で夕食と朝食をとりましたが、味、美しさ、独創性、どれをとっても一流と言ってよいレベルです。感染防止対策も、正しい方法でしっかり行われています。
問題は接客です。まずフロント。チェックインに最初対応した男性は、名前、電話番号、住所を記入するよう指示しました。私は、旅行ポータルサイトでなく、ホテルの公式サイトで、アカウントを登録して予約しているので、氏名も、電話番号も、住所もホテル側で把握しているのに、無意味なことをさせるなあと思いました。仕方なく私が記入していると、途中で女性が男性に「私が代わります」と言って、交替しました。女性は、私の手を止めて、「お名前と電話番号だけでけっこうです」と言ってくれました。男性は、予約情報をろくに確認せず、誰にでも漫然と同じ対応をしているようです。
次にレストラン。夕食に「フォンターナ」に入ったところ、入口に誰もいらっしゃらず、客席では従業員がテーブルを消毒していました。案内されないのに、勝手にレジの一角を通り過ぎ、店内にあまり深く入るのはマナー違反なので、しばらく待ちましたが係が出て来る気配がありません。そこで、勝手に越えてはいけない線を少し越えて、テーブルと従業員が見えるところまで入り、「こんにちは」と声をかけてみました。しかし従業員は気づきません。しばらく彼女の作業ぶりを見ていると、少しずつ私の方に近づいて、視線が合いそうになりますが、気づきません。「ひょっとして準備中ですか?」と声をかけると、やっと気づいて案内してくれました。
彼女はそれで終わりません。オーダー取りで異様にもたもたします。前菜と肉料理をそれぞれ選択肢から選べる簡易フルコースを注文しました。簡易フルコースは1種類しかないので、「簡易フルコース/前菜は…を選ぶ/肉料理は…を選ぶ」と3つの情報を書き留めれば注文を把握できるはずなのに、いやに時間をかけて、何度も確認します。
カトラリはセットしてもらえず、ファミレスのようにテーブルの籠から自分で取ります。それが悪いとは言いませんが、PR、店内造作、料理などからなんとなく感じる「フォンターナ」のカジュアル度/フォーマル度からすると、違和感があります。
入口に係が不在で、案内まで待たされるのは、朝食の時も同じでした。従業員を少なくして有効活用することが最優先で、お客を待たせてもかまわないと考えているようです。
彼女以外の接客係にも、経験不足、勉強不足、説明不足を感じました。ただ、一人だけ、接客を呼ぶ客がいないかをさりげなく見ている女性がいらっしゃって、救われました。
「フォンターナ」に関しては、BGMにも問題がありました。夕食時のBGMは、一応ジャズの選曲ではありましたが、イタリアレストランというよりは、どちらかと言えばパチンコ屋に近い慌ただしい選曲で、料理が喉を通らない感じでした。朝食時はさらに悪く、音質が悪く、音量が大きすぎ、ピアノ+波の音+小鳥のさえずり三重奏という意味不明の選曲で、耳障りでした。切れ目で無音の時間がくると、ほっとしました。ピアノも波の音も小鳥も、それぞれ単独では心地よいものですが、それらを三つ同時に重ねるセンスに、趣味の悪さを感じます。特に、波の音と小鳥を重ねるセンスを疑います。小鳥と重ねるなら、流れる水の音でしょう。入口天井のスピーカの音はそれほど悪くなかったので、音質の悪さは、音源ではなく客席のスピーカが原因かもしれません。
以上のように接客に関しては、全体として、経営母体移管前の優秀なスタッフがほとんどいらっしゃらなくなり、初心者の集団になっているような印象を受けました。
また、利用者へのwebアンケートでは、予約係の対応の評価を問う質問があり、良い/悪いしか選択肢が用意されていませんでした。公式サイトで予約した場合は予約係とのやり取りがないので、「該当せず」という選択肢がないと選びようがありません。「お口に合わなかったかった料理」という誤文もありました。このようにwebアンケートにまで瑕疵があります。
労働災害では、ハインリヒの法則が知られています。1件の死亡事故の背後には約300件のヒヤリハットがあり、死亡事故を防ぐにはヒヤリハットを潰していく必要があることを教えるものです。ここに指摘した瑕疵は、一つ一つは小さいものですが、それらを放置すると、取り返しのつかないトラブルを招く恐れがあることをハインリヒの法則は教えています。まあ、ホテルの場合、せいぜい損害賠償か慰謝料どまりと考えられ、命に関わるトラブルではないことが救いではありますが。