
飛行機の新型コロナ対策は?JALに聞く【コロナ後の旅アドバイス】
トリップアドバイザーでは、旅行者の皆様が正しい情報の元、新たな旅を計画し、旅を再開する後押しとなるよう「コロナ後の旅アドバイス」を特集いたします。まだまだ終わりの見えないコロナ時代の旅をどのように考えていくのか? 施設のリスクや対策はどうなっているのか? リスク軽減のために旅行者に何ができるのか? 公衆衛生や医療関係者、旅行に関係する事業者の皆様など幅広い方々にお話を聞きながら、ともに考えていきます。
2020年6月にトリップアドバイザーが実施した意識調査では、およそ半数の人が、半年以内に国内を旅することを考えていると回答しています。一方で、飛行機を利用した国内の旅を検討している人は12%と、かなり低い回答となっていました。やはり飛行機での移動に漠然とした不安をもっている人が多いようです。そこで今回は、日本航空(JAL)さんに航空機内のコロナ対策をお聞きするとともに、チェックインや搭乗までの実態を、実際に空港で取材させていただきました。
チェックイン:人との接触はほとんどなし
今回取材したのはJALの国内線が発着する羽田空港第1ターミナル。お盆直前の金曜日という繁忙期だけあって、そこそこの人出がありました。とはいえ、例年に比べれば3割程度とのこと。
南ウイングの出発ロビーでまず出迎えるのは、いくつかの島に分かれて並ぶ自動チェックイン機です。実はJALでは2020年2月より、手続きの短縮を目的にチェックインカウンターを大幅にリニューアル。チェックインから搭乗までの手続きをセルフ化していました。
同じく、近未来的デザインの自動手荷物預け機も今年の2月より導入が始まった最新マシンです。自動チェックイン機で発行されたタグを自分で手荷物につけ、ICカードやバーコードをかざせば自動で荷物が運ばれる完全セルフシステム。チェックインから手荷物の預け入れまで、人と対面することなく手続きが可能です。今後は、抗菌パネルや直接触れずに操作できるパネルの導入も検討しているそうです。
自動チェックイン機や自動手荷物預け機は、タッチパネルなどよく触れられる場所を中心に定期的に消毒・清掃されています。
自動手荷物預け機は一部の空港にしかないので、設置されていない空港ではカウンターで荷物を預けます。どの空港もカウンターには透明パーティションが設置され、スタッフはマスクを着用。飛沫防止の対策はしっかりとられていました。
空港には自動チェックイン機がありますが、自宅などでウェブサイトから事前チェックインと事前座席指定をしておくと、空港では直接、保安検査場へ向かえばよいのでより安心。預ける手荷物がある場合は自動手荷物預け機、もしくは手荷物カウンターで預けます。自動手荷物預け機を利用する際は、自動チェックイン機で手荷物用のタグだけ発行します。
今の時期、スムーズに搭乗するためには、荷物は事前に現地に送っておくというのもありかもしれませんね。
空港や機内ではマスクの着用が基本。また行列ができている場合は、足元の案内に従ってソーシャルディスタンシングを確保しましょう。カウンターや自動チェックイン機などには消毒液が置かれているので、何かを触る前、触った後は手指の消毒を忘れずに。
保安検査場:サーモカメラで体温をチェック
搭乗ゲートへ向かう前に保安検査場で手荷物をX線に通します。保安検査場のスタッフはマスクと手袋を着用しており、手荷物に直接触らないようにしていました。
羽田空港の保安検査場の前にはサーモカメラが設置してあり、通過する人の体温を測っています。気になるのは、何度の熱で搭乗できないのかということ。JALによると「目安として37.5度以上」で声をかけて、体調などを確認するそうです。
検査レーンが限られる保安検査場ではどうしても行列ができてしまうので、足元の案内表示に従ってソーシャルディスタンシングを確保。いつもより時間に余裕をもって保安検査場を通るようにしたいものです。
搭乗口:人数を区切って機内へ案内
保安検査場を通過したら搭乗口で出発を待ちます。機内へは後方の席から順番に案内されますが、いつもより人数を絞って10~20人ずつ案内していました。人数を区切ることにより行列を減らし、機内へ向かう通路に乗客が滞留するのを防いでいるそう。
搭乗口の前にはソーシャルディスタンシングシールが貼られ、乗客どうしの距離が保てるようになっています。
搭乗口の椅子にも、空港ビル運営会社などによりソーシャルディスタンシングシールが貼られています。乗客が集まる場所でも、密にならない工夫がされていました。乗客側も意識的にソーシャルディスタンシングを確保することが重要でしょう。
機内:機内の空気は2~3分で入れ替わる
いよいよ飛行機が出発。機内は閉じられた空間なので、換気がどうなっているのかは最も気になるポイントです。
機内の空気は、機外の空気をエンジンで圧縮したもの(下図1)。エアコンで温度を調整した空気は、天井から客室内へと送風されています(下図2)。客室内の空気は機内外の気圧の差によって床下に流れ、一部は開閉弁から機外へ排出(下図3)。機内を循環している空気は、微細なガラス繊維でできた高性能フィルター(HEPAフィルター)で清浄され送風量も増えています(下図4)。
一般的な家庭やオフィスのエアコンは室内の空気を循環させていますが、飛行機内はさらに機外から空気を取り入れるため、常に新しい空気が循環していることになります。空気が入れ替わるまでにかかる時間はおおむね2~3分。例えば客席数352席の映画館で空気が入れ替わるのに約20分といわれているので(全国興行生活衛生同業組合連合会調べ)、飛行機の換気能力は非常に高いといえます。
※一部、異なる仕組みで換気される機体もありますが、おおむね4~6分で新しい空気に入れ替わります。またHEPAフィルターではない手法で清潔な空気を保つ機体もあります。
機内の消毒は夜間整備の際にテーブルやひじかけ、パーソナルモニター、コントローラーなどの座席まわり、またトイレのドアノブや蛇口ハンドルなどをアルコールで除菌しているとのこと。最も感染リスクの高そうなトイレは、運航中も客室乗務員が使い捨ての防護服を着用して清掃を行っています。
客室乗務員は基本的にマスクを着用しています。食事・飲み物のサービスの際は、さらに手袋と透明な眼鏡(セーフティグラス)をつける徹底ぶり。飲み物は紙パックや缶に限定されていましたが、8月からお茶やアイスコーヒーの紙コップでの提供も始まっています。
またファーストクラスの食事は、蓋付きの容器や個包装での提供になっています。
機内に持ち込んだ手荷物は、なるべく自分で収納。席に座ったらマスクをしたまま静かに過ごすというのが基本です。飛沫感染を防ぐため機内での会話は控え、必要なとき以外は移動しないようにしましょう。
トイレには手指消毒スプレーが置かれているので、使用後はしっかり消毒すること。また機内で配っているアルコールシートを使い、気になる部分は自分で除菌するというのも大切です。
ラウンジ:使用したテーブルはその都度、消毒
最後にJALの国内線ラウンジのコロナ対策を紹介します。受付には飛沫防止のパーティションを設置。スタッフはマスクを着用しています。ただし、ICカードやバーコードで受付できるようになっているので、基本的に人との接触はありません。
食事や飲み物は個食・個包装が基本。カウンターには小皿ごとにラップフィルムで覆われたパンや個包装のおにぎりが並んでいます。
使用した椅子やテーブルはスタッフがその都度、消毒・掃除していました。スタッフは飲み物などをサーブするときは白い手袋、片付けや消毒のときは青い手袋と使い分けているそうです。
また羽田空港と那覇空港のラウンジでは、食事エリアを中心に営業終了後の夜間、二酸化塩素噴霧器による空間除菌を行っています。
対面座席や隣り合った席にはパーティションが設置されていますが、大声の会話は控えるなど飛沫感染の防止に協力しましょう。また、混雑していない限りは、なるべく他の利用者との間隔が取れる席を選ぶ方が、お互いに気分良く過ごせます。
特に気をつけたいのは、飲食のタイミング。おにぎりなど口に入れるものを手で触る前には、念の為、備え付けのアルコール消毒液などで手指を消毒し、食べている間の会話は特に控えましょう。
またトイレを利用した際には、必ず石鹸で手洗いを。流すときには蓋を閉めるのも新しいマナーとなっています。
このように空港や機内では、さまざまなコロナ対策がとられています。きちんと準備をしておけば、ほとんど人と接することなく飛行機に乗れることがわかりました。
航空会社としては、できる限りの対策をとって乗客を迎えているという印象。私たち乗客側も、事前チェックインや事前座席指定サービスを利用するなど、感染リスクを減らす工夫をすることが、新しい旅のスタイルとして求められそうです。
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